基本的な考え方

 コーポレート・ガバナンスとは、企業が行う意思決定のしくみそのものであるとともに、その意思決定の妥当性や意思決定プロセスの透明性、公正性を維持・向上しつづける不断の取り組みであると認識しています。
 当社は、社会課題の解決と持続的な事業成長を通じた企業価値向上とビジョン(ありたい姿)の実現に向け、コーポレート・ガバナンスの強化を極めて重要な経営課題(マテリアリティ)と位置づけており、プライム市場上場企業に求められる高い水準のコーポレート・ガバナンスの実践をめざします。

コーポレート・ガバナンス基本方針

 当社は、当社グループに適用する「コーポレート・ガバナンス基本方針」を以下のとおり定めています。

(1) 株主の実質的な権利と平等性を確保していく
(2) 株主以外の取引先、金融機関、従業員、地域社会などさまざまな利害関係者とも適切な協働関係を確保していく
(3) 会社情報を適時・適切に開示し、透明性を確保していく
(4) 取締役・監査役および取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を適切に果たしていく
(5) 株主と合理的な範囲内で建設的な対話に努めていく

コーポレート・ガバナンス体制

 当社は、監査役会設置会社です。社外監査役が半数を占める監査役会と社外取締役が3分の1を占める取締役会を中核としたコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。取締役会は、経営の重要事項の決定と業務執行の監督・助言を行う機関として機能しています。
 当社は、監督と執行機能の明確化、意思決定の迅速化などを目的として、法令および定款の範囲内で妥当と判断する業務執行を社長執行役員COO以下の執行役員に委譲しており、取締役会はその監督と助言を行います。また、役員の指名・報酬に関する手続きの公平性・透明性・客観性の強化を目的に、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置しています。
 監査役会は、取締役会と協働で会社の監督機能を担っています。監査役は、取締役会などの重要な会議に出席するほか、業務監査や会計監査などを通じて、取締役会および業務執行機能に対する監査・監督を行います。

 

●コーポレート・ガバナンス体制図

取締役会について

 取締役会は、高度な経営の意思決定および業務執行に対する監督を行う機関として位置づけられており、社外取締役 3名を含む7名で構成されています。
 取締役会は、経営の公正性、透明性などを確保するため、業務執行取締役および執行役員に対する監督機能を担う一方、法令および規程により取締役に委任することができない決議事項や重要な業務執行について意思決定を行います。
 また、決議事項や重要な業務執行以外の意思決定や業務執行については、各業務執行取締役と執行役員に権限の委譲を行い、取締役会は業務執行の状況報告などを受け、適切に監督を行います。
 取締役会は原則として毎月1回開催するほか必要に応じて開催し、重要案件については議論の深化や決定プロセスの明確化を念頭に事前協議の場としての経営協議会も設置しており、経営環境の変化に機動的に対応し、効率的な運営に努めています。
 これら取締役会、経営協議会に加え、原則として毎月1回グループ幹部会を開催し、グループガバナンスとして、当社、株式会社エネゲートおよびEDMI  Limitedの3社の活動状況をモニタリングしています。また、社内取締役で構成される経営会議を原則週1回開催し、当社グループの企業集団に影響を及ぼす経営課題等について多面的な検討、協議を行っています。
 当社は、豊富な経営経験や実務知識ならびにこれらに基づく高い見識を有し、かつ経営陣から独立している人物を独立社外取締役または独立社外監査役として選任しており、取締役会、経営協議会、グループ幹部会のすべてに出席し、当社の経営全般に関わる重要な事項について、審議、決議に参加し、有用かつ適切な助言をし、監督機能を果たしています。

取締役・監査役のスキルマトリックス

 当社グループは、事業環境の変化に対応しながら価値創造プロセスを確実に回すことで、中期経営計画の達成をはじめ中長期視点でのビジョンの実現に向けた取り組みを進めています。
 この取り組みを着実に実行し、グループ全体の持続的成長を実現するためには、取締役会がその機能を十分に発揮することが不可欠です。当社では、執行役員制度の導入により取締役会を少数精鋭化し、戦略的意思決定の質とスピードの向上を図っています。加えて、取締役会として備えるべきスキル領域として8分野を特定しています。
 現在の取締役および監査役は、それぞれが多様な知識・経験・能力を有しており、取締役会全体としてスキルの多様性とバランスが確保されていると認識しています。今後も、当社グループのさらなる成長に向けて、取締役会の知識・経験・能力のバランス、多様性、規模が最適となるよう継続的に検討を進めていきます。
 

取締役会の諮問機関:指名・報酬委員会

 当社は、取締役および執行役員の指名・報酬等に関する手続きの公正性・客観性・透明性を強化し、コーポレート・ガバナンスの充実を図るため、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置しています。指名・報酬委員会は、取締役である委員5名で構成され、その過半数は独立社外取締役から、委員長は独立社外取締役から選定しています。

 取締役・執行役員(再任を含む。以下同じ)の指名に際しては、スキル(知識・能力・経験)、人格、職務遂行状況を総合的に判断して、代表取締役が候補者を選定し、その選定の妥当性を同委員会で審議したうえで取締役会において、同委員会の答申を踏まえ、選任議案を審議しています。

 

役割

 指名・報酬委員会は取締役会から諮問を受けた次の事項について審議し、取締役会に対して答申します。

(1) 取締役および執行役員の選解任に関する事項

(2) 代表取締役の選定および解職に関する事項

(3) 役付取締役および役付執行役員の選定、選任および解職、解任に関する事項
(4) 後継者計画(育成含む)に関する事項

(5) 取締役および執行役員の報酬制度および報酬決定の方針に関する事項

(6) 取締役および執行役員の個人別の報酬等に関する事項

(7) 取締役の報酬限度額に関する事項

(8) その他、取締役会が必要と判断した事項

指名・報酬委員会の構成

水野正望 社外取締役(委員長)
笠井伸啓 社外取締役
黒木彰子 社外取締役
渡辺佳英 取締役会長CEO
渡辺光康 取締役社長執行役員COO

2024年度の活動状況

 2024年度は指名・報酬委員会を11回開催しており、個々の委員の出席状況および主な審議内容は次のとおりです。

  • 指名・報酬委員長の選任
  • 後継者計画
  • 役員および執行役員の選任
  • 業績連動報酬における会社業績指標の実績評価/目標値設定
  • 取締役・執行役員の個人別評価/報酬

後継者計画

 重要な経営課題の一つとして、これまで懸案であった、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画について、2024年度の全11回のうち7回にわたり議論を重ね、会社のめざすべき方向性や経営戦略を踏まえたなかで、人材要件、キャリアパスおよび育成方針について審議し、取締役会へ答申しました。今後、この後継者計画を踏まえ、取り組みを進めていきます。

取締役会の実効性評価

 当社は、取締役会の実効性について、持続的な向上を図るため、定期的に分析・評価を行い、重要性原則に基づく改善に取り組んでいます。
 2023年度は、自社内でのディスカッション方式を選択し課題の抽出と深掘りに注力しましたが、2024年度は、社外役員の異動があったことや定点観測の必要性を重視し、アンケート方式による分析・評価を実施しました。
 2024年度には、6月に女性監査役を選任し取締役会の多様性拡大を図りました。さらに、実効性評価の過程では、経営協議会や指名・報酬委員会における審議の充実、取締役会への答申・報告の強化等が課題として提起され、これに対する改善を継続的に進めています。こうした取り組みを通じて、当社の取締役会は引き続き実効性が確保されていると認識しています。
 さらに、長年の課題であったCEO等の後継者計画についても、指名・報酬委員会において継続的な審議を重ねた結果、CEO等の後継者に求められる人材要件、育成方針、キャリアパスの整理が進み、大きな前進を遂げることができました。

 一方、執行部門の今後の課題として「経営資源配分(人的資本、研究開発等)の議論の深化」「中長期成長戦略・人的資本戦略の議論の深化」「企業理念・価値観浸透の取組強化」「事業部制の効果検証」等を抽出しています。これらは取締役会としても執行部門の課題として認識し、今後、経営協議会等を通じて進捗の監督を行っていきます。

監査役会について

 当社は監査役会を設置し、社外監査役を含めた監査役監査体制により経営監視機能を果たしています。監査役は4名で、うち2名が社外監査役かつ独立役員となっており、社外からのチェック機能を果たし、経営監視機能の独立性、客観性を確保しています。
 2024年度の監査にあたっては、2023年度の監査総括において以後継続して取り組むよう要望した事項に加え、新たな経営環境・経営課題を踏まえ、次の6項目を重点監査項目として掲げ監査を実施しました。

(1) 当社グループ収益構造改革等の進捗状況
(2) 全電力仕様統一化に向けた対応
(3) 海外事業の諸課題への取り組み
(4) 大崎電気の組織改革の対応状況の確認
(5) コーポレート・ガバナンスとリスク管理の強化
(6) 2023年度に発覚したコンプライアンス違反事例関連

 

 監査役は、経営監視機能として、取締役会、経営協議会、グループ幹部会などの重要会議に出席し、適宜意見を述べています。また、業務・財産の調査、重要決裁書類の閲覧、各部門担当取締役および執行役員への聞き取り調査を実施しています。これらを通じて監査役会は、取締役の職務執行に関する不正行為の有無、法令・定款の遵守状況の確認を行っています。
 また監査役は、会計監査人と四半期決算ごとに会合を設け、当該期間における監査の方法およびその結果について報告・説明を求めるとともに、情報・意見交換を実施し、監査の充実・強化に努めています。また、内部監査を担当する経営監査室から原則月1回内部監査結果について報告を受けるとともに、意見交換を実施し、監査の質を高めています。
 独立社外取締役と独立社外監査役は、経営方針、取締役等経営陣の体制・業務執行状況等、経営全般に関わる重要な事項について、独立した客観的な立場から情報交換・認識の共有を図るため、定期的な会合を設ける等連携し、取締役会における議論に活用しています。

取締役・監査役のトレーニング

 当社は、取締役・監査役が当社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、当社の費用負担にて実施する取締役・監査役へのトレーニングの方針を以下のとおり定めます。
(1)新任取締役・新任監査役
  就任直後の外部セミナーの受講
  社内コーポレート・ガバナンス研修
(2)取締役・監査役
  最低年1回以上の外部専門家による会社法等セミナーの実施
  その他、有用なテーマのセミナー受講の奨励
(3)社外取締役・社外監査役
  上記に加え、当社の業務全般に係る事業説明(事業所視察を含む)の実施

役員報酬

基本方針

① 取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針に関する事項
当社は、取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針(以下、決定方針という)を定めており、当該決定方針は、委員の過半数を独立社外取締役ないしは独立社外監査役とする指名・報酬委員会の審議・答申を踏まえ、取締役会決議にて決定しています。
取締役の個人別の報酬等の内容の決定に当たっては、指名・報酬委員会が決定方針との整合性や妥当性を検討しており、取締役会も基本的にその答申を尊重し決定方針に沿うものであると判断しています。
なお、各監査役の報酬額は、監査役の協議により決定しています。
2022年3月期より、中長期的な業績向上のインセンティブを強化し、株主との一層の価値共有を進めることを目的として、株式報酬型ストックオプション制度を廃止し、新たに譲渡制限付株式報酬制度(社外取締役を除く)を導入しました。
また、短期的な業績向上のインセンティブを強化するべく、2006年6月29日開催の第92回定時株主総会において決議された年額3億円以内(ただし、使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない)の内枠として運用する業績連動報酬制度を導入しました。

 

《基本方針》
当社の役員報酬は、継続的な企業価値の向上および企業競争力の強化のため、優秀な人材の確保を可能とするとともに、業績向上へのインセンティブとして機能する水準・構成とすることを基本方針とする。具体的には、業務執行を担う取締役の報酬は、基本報酬、業績連動報酬および譲渡制限付株式により構成し、その支給割合については、企業価値の持続的な向上に寄与するために最も適切な割合となることを方針とする。なお、監督機能を担う社外取締役の報酬は、基本報酬のみとする。


《基本報酬》
基本報酬は、金銭による月例の固定報酬とする。基本報酬の金額は役位、職責等に応じて定めるものとし、業績、他社水準、社会情勢等を勘案して、適宜、見直しを図るものとする。


《業績連動報酬》
業績連動報酬は、事業年度ごとの業績向上に対する意識を高めるため業績指標を反映した現金報酬とし、各事業年度の本業で稼いだ利益を表す連結および単体営業利益率を基準として目標値に対する達成度合いに応じて算出された額を賞与として毎年一定の時期に支給する。なお、2024年度は、連結営業利益率が目標5.2%に対し実績5.9%、単体営業利益率が目標2.5%に対し実績4.9%となりました。


《譲渡制限付株式》
株主との価値の共有を図り、中長期的な業績向上へのインセンティブを高めることを目的として、業務執行を担う取締役に対し、譲渡制限期間を30年以内とする譲渡制限付株式を、毎年一定の時期に付与する。付与する株式の個数は、役位、職責等を踏まえて決定する。


② 取締役および監査役の報酬等についての株主総会の決議に関する事項
当社取締役の金銭報酬の額は、2006年6月29日開催の第92回定時株主総会において年額3億円以内(ただし、使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない)と決議しています。当該定時株主総会終結時点の取締役の員数は15名です。また、当該金銭報酬とは別枠で、2021年6月25日開催の第107回定時株主総会において、譲渡制限付株式の付与のための金銭債権報酬額を年額1億円以内(ただし、使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない)と決議しています。当該定時株主総会終結時点の取締役(社外取締役を除く)の員数は5名です。
当社監査役の金銭報酬の額は、2025年6月27日開催の第111回定時株主総会において監査役全体の報酬枠を年額8,000万円以内と決議しています。当該定時株主総会終結時点の監査役の員数は4名(うち社外監査役2名)です。

 

③ 取締役の個人別の報酬等の内容の決定に係る委任に関する事項
当社では、取締役の個人別の報酬額の具体的内容については、指名・報酬委員会の審議・答申を踏まえ、取締役会の委任決議に基づき取締役会長CEO(代表取締役)渡辺佳英および取締役社長執行役員COO(代表取締役)渡辺光康の両氏が決定しています。委任の理由は、指名・報酬委員会の審議を経て客観性や妥当性が確保されていることと、両氏が当社グループの経営環境や状況を最も熟知し総合的な判断が可能であると判断しているためです。